インプラントの適応と骨造成
インプラント治療は誰でも選択できる治療法ではありません。インプラント治療は外科手術が必要なため、口腔内や骨の状態、持病、生活習慣によっては適応外となる可能性もあるのです。
本コラムでは、インプラント治療の適応外となる症例をご紹介します。また、顎骨のボリュームが不十分でインプラント治療の際に必要となる骨造成についても解説いたしします。
インプラントの適応
基本的にインプラントは、顎骨の成長が終わった健康な方であれば適応可能です。しかし、状況によっては適応出来ない場合があります。下記にインプラントの適応が難しいケースを紹介いたします。
・妊娠中・授乳中
・認知症
・パーキンソン
・精神疾患
・メンテナンスの為に通院できない
全身疾患がリスクとなっている場合は、内科医や外科医と連携して全身の状態をコントロール出来れば治療可能と判断される場合もあります。また、インプラントの適応を妨げる原因を取り除くことで、インプラント治療を受けられる可能性が高まります。虫歯や歯周病の場合は治療を、歯並びが悪い場合は歯列矯正を検討しましょう。
なお、喫煙は歯周病のリスクを高め、インプラント術後の骨結合を妨げる要因となりえます。インプラントを希望する場合には、徹底した禁煙が必要です。
インプラントのための骨造成・骨再生治療
インプラントを受けるには、顎骨に十分な厚みと高さが必要です。以前は顎の骨が薄いためにインプラント治療が難しいと判断されたケースも、現在では骨造成という骨の再生治療によりインプラント治療が選択できるようになりました。
骨造成術は主に次の3つです。
・ソケットリフト
・サイナスリフト(上顎洞底挙上術)
・GBR(骨誘導再生法)
ソケットリフトは、上顎洞の下の骨から人工の骨補填材を挿入し中央から骨を造成する方法です。侵襲性は低いものの、骨造成の量は限られるため、骨吸収の少ない場合に適用可能です。ほとんどの場合、骨補填材の填入とともにインプラント体を埋め込みます。
サイナスリフトは上顎洞の横から自家骨や人工の骨補填材を入れる方法です。広範囲に骨造成が必要な場合に適しており、骨造成後にインプラント体を埋入します。上顎洞内の粘膜の状態を直接確認しながら手術を行えるので安全です。
GBRは、顎の骨やインプラント埋入予定の周囲の歯槽骨が不足している場合に適応となります。骨補填剤や自家骨を移植して、骨の再生を促す方法です。
もし、骨量不足や顎骨の薄さを理由にインプラント治療を断られた場合は、骨造成や骨再生を行う歯科医院に再度相談してみましょう。これらの再生治療は、骨の量を増やすことで、インプラントを支える基盤を作り上げるためのものです。当院や専門の歯科医師にご相談いただき、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
Q1:骨造成は保険適用ですか?
A1:インプラントと同じく保険適用外です。費用については骨造成の方法や不足部分の大きさにより異なりますが、ソケットリフトでは65000~100,000円、サイナスリフトでは200,000~500,000円、GBRでは65,000~150,000円が相場となっています。
Q2:骨造成にかかる手術時間はどれくらいですか?
A2:骨造成のみの場合は30分から1時間程度、インプラント埋入を同時に行う場合は45分から1時間程度です。
記事監修 医療法人明貴会 ⼭⼝⻭科医院 理事⻑ ⼭⼝ 貴史
■ 略歴
- 1982年 大阪歯科大学卒業
■ 所属学会