インプラント治療の失敗例とその対策
インプラントは失った歯の機能を取り戻す治療の中でも、審美性と咀嚼機能の改善に優れた方法です。しかし、インプラント治療は100%成功するわけではありません。
本コラムではインプラント治療の失敗例を紹介し、その対策についてお伝えします。インプラント治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
インプラント治療の失敗例
インプラント治療の主な失敗例には、以下のようなものが挙げられます。
・インプラントと顎の骨が結合しない
・インプラントの脱落、破損
・術後のメインテナンス不足
各項目について詳しく解説します。
インプラントと顎の骨が結合しない
インプラントと顎の骨が結合しない(オッセオインテグレーションの獲得ができない)原因は下記の通りです。
・インプラント体埋入時の不適切な手技による骨の火傷や手術部位の感染
・糖尿病がコントロールされていない状態での手術(糖尿病により毛細血管がダメージを受け創部の治癒が進まず感染しやすい)
・インプラント手術前の不十分な歯周病治療
インプラントの脱落・破損
インプラント治療終了後(上部構造装着後)に、インプラントが脱落・破損した場合も、失敗例として挙げられます。
脱落の代表的な原因は「インプラント周囲炎」です。歯周病菌の感染によりインプラント体を支える骨が溶けてしまい脱落の原因になります。
インプラント治療を受ける前に口腔細菌検出装置 「orcoa オルコア」による歯周病菌(red complex , Porphyromonas gingivalis , Tannerella forsythia , Treponema denticola)の検査と歯周病治療が必須と言えます。
術後のメインテナンス不足
咬み合せは時間と共に変化していきます。インプラント治療を受けた部分が不適切な咬み合せになって過剰な咬合力がかかり続けると上部構造やインプラント体、アバットメントスクリューの破折につながります。3ヶ月毎のメインテナンス時に咬み合せのチェックを行い、必要に応じて調整することが大切です。また歯ぎしり、食いしばり等のクセや、過剰な咬合力への対応は咬筋へのボトックス注射やマウスピースが非常に有効です。
インプラント治療は外科手術が必要になる治療で、正確な検査や診断、適切な手術手技、清潔な環境での手術が必要になります。これらが揃わない状態でインプラント治療に臨むと神経の損傷や、重篤な感染のリスクがあります。
インプラント治療で失敗しないための対策方法
インプラント治療を失敗しないための主な対策方法は次の通りです。
・実績のある歯科医院を選ぶ
・口腔環境を清潔に保つ
・禁煙する
・生活習慣病は適切な治療を受ける
まず、安心して治療を受けられる歯科医院選びが大切です。価格だけでなく、設備や歯科医師・スタッフの経験、難症例への対応などを確認しましょう。
インプラント治療が始まったら、歯科医師や歯科衛生士の指導の元、口腔内のケアを徹底してください。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなどを使って、口腔環境を清潔に保つことが大切です。
また、喫煙習慣のある方は、インプラント治療開始前からの禁煙をおすすめします。なぜなら、タバコに含まれるニコチンの影響で歯周組織の血管が収縮し、血流が悪くなり治癒の障害になります。感染への抵抗力も低下します。
インプラントを埋め込んだ後は、インプラント周囲炎の予防のために、定期的に歯科医院でプロフェッショナルによるメンテナンスを受けましょう。
当院では患者さまが安心して治療を受けられるよう、専任のコーディネーターがインプラントについて気兼ねなく相談できる体制を整えています。ぜひ当院でのインプラント治療をご検討ください。
Q1:インプラント治療に失敗した場合の対処法は?
A1:基本的にはインプラントの再手術、またはブリッジなどの代替治療で対処します。それぞれ異なるリスクがあるため、インプラントの経験豊富な歯科医師とともに慎重に検討することをおすすめします。
Q2:インプラント手術の成功率はどれくらいですか?
A2:当院の10年間経過症例の統計では、上顎で96%、下顎で99%の維持率を確認しています。
記事監修 医療法人明貴会 ⼭⼝⻭科医院 理事⻑ ⼭⼝ 貴史
■ 略歴
- 1982年 大阪歯科大学卒業
■ 所属学会