インプラント手術は痛い?麻酔・術中・術後の痛みをわかりやすく解説
インプラント手術を検討しているものの、「手術は痛いの?」「麻酔をしていても痛みを感じるのでは?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、インプラント手術は麻酔を使用して行うため、手術中に強い痛みを感じるケースは多くありません。
一方で、麻酔が切れた後には、傷口の痛みや腫れ、違和感などが生じることがあります。
インプラント手術の痛みは、主に次のタイミングで考えるとイメージしやすいでしょう。
▶麻酔をするとき:注射によるチクッとした痛みを感じることがあります。
▶手術中:麻酔が効いていれば、強い痛みよりも「押される」「振動する」などの感覚を覚えることがあります。
▶麻酔が切れた後:傷口の痛みや腫れが出ることがあります。
▶数日後:痛みや腫れは徐々に落ち着いていくことが一般的です。
▶痛みが強い・長引く場合:感染など別の原因が隠れている可能性もあるため、歯科医院への相談が必要です。
また、痛みの程度や続く期間は、手術の範囲や骨の状態、抜歯の有無、治療内容などによって異なります。そのため、「インプラントなら必ず○日痛い」と一概に決めることはできません。
この記事では、インプラント手術で痛みを感じやすいタイミング、麻酔によってどこまで痛みを抑えられるのか、術後の痛みや腫れの目安、痛みが強いときの対処法について、わかりやすく解説します。
インプラントの痛みは親知らず抜歯より軽い?治療別の痛みの強さを比較
インプラント治療に伴う痛みは、一般的に「親知らずの抜歯と同程度か、それよりも軽い」と言われることが多いです。
特に、歯茎を切開せずに小さな穴を開けるだけで済むような症例(フラップレス手術など)では、術後の痛みや腫れがほとんど出ないこともあります。
痛みの感じ方には個人差がありますが、他の歯科治療と比較することで、インプラントの痛みがどの程度のものか具体的にイメージしやすくなります。
局所麻酔を使うため術中の痛みはほぼ感じない
インプラントの手術中は、局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。
麻酔は虫歯治療や抜歯の際に使うものと同じで、手術する部分の感覚を一時的に麻痺させます。麻酔がしっかりと効いている状態を確認してから手術を開始するため、骨を削る際も痛みはなく、振動や音を感じる程度です。
歯科医院によっては、表面麻酔を塗ってから注射をするなど、麻酔注射自体の痛みを軽減する工夫も行っています。そのため、手術中の痛みに関しては、過度に心配する必要はないでしょう。
虫歯治療や親知らずの抜歯と痛みの種類・度合いを比較
インプラント手術の痛みは、親知らずの抜歯、特に骨に埋まっている歯を抜く際の痛みに似ていると言われます。
どちらも歯茎の切開や骨の処置を伴うためです。
ただし、インプラントは事前のシミュレーションに基づき計画的に最小限の範囲で行われるのに対し、親知らずの抜歯は歯の生え方や状態によって手術の規模が大きくなり、術後の痛みが強く出やすい傾向があります。
一方、虫歯治療の痛みは神経に直接響くような鋭い痛みが特徴ですが、インプラントの術後の痛みは、傷口が治る過程で生じるズキズキとした鈍い痛みが中心です。
【時系列】インプラント手術後の痛みのピークはいつ?回復までの流れ
手術後の痛みは、時間の経過とともに変化していきます。
ここでは、手術当日から抜糸までの痛みのピークと回復過程を時系列で解説します。
手術当日:麻酔が切れた後から痛みが出始める
手術当日は、局所麻酔が効いているため術中や術直後に痛みを感じることはありません。
しかし、手術後2~3時間ほどで麻酔が切れてくると、徐々に痛みが出始めます。
多くの場合、手術後には痛み止め(鎮痛薬)と抗生物質が処方されます。痛みが本格的に出てくる前に、指示通りに痛み止めを服用しておくことがポイントです。
麻酔が切れるタイミングを想定して早めに薬を飲むことで、痛みのピークを抑えやすくなります。
手術後1~3日:痛みのピークと腫れが最も出やすい時期
手術後の痛みは、手術当日よりも翌日から3日目にかけてピークを迎えることが一般的です。
この時期は、痛みと共に顔の腫れが最も出やすくなります。特に、骨を増やす処置(骨造成)などを同時に行った場合は、頬が大きく腫れることもあります。
処方された痛み止めを服用し、適切に患部を冷やすことで症状を和らげることができます。
日常生活では安静に過ごすことを心がけ、食事は柔らかいものを選ぶなどの配慮が必要です。
手術後4日~1週間:痛みや腫れが徐々に引いていく期間
手術後4日目頃になると、痛みのピークは過ぎ、腫れも徐々に引き始めます。多くの人が、痛み止めの服用回数が減ったり、不要になったりする時期です。
まだ多少の違和感や軽い痛みは残ることがありますが、日常生活への支障は少なくなっていきます。
ただし、治癒過程にあるデリケートな時期なので、引き続き硬いものを避け、口内を清潔に保つよう努めることが大切です。
抜糸後(約1~2週間後):ほとんどの痛みや違和感がなくなる
通常、手術から1~2週間後に、歯茎を縫合した糸を取り除く「抜糸」を行います。抜糸をする頃には、ほとんどの痛みや腫れは治まっています。傷口が治癒し、縫合糸がなくなることで、口の中の違和感も大きく軽減されるでしょう。
これ以降は、インプラントと骨が結合するのを待つ期間に入ります。もしこの段階でも強い痛みが残っている場合は、何らかの問題が起きている可能性があるため、速やかに歯科医師に相談してください。
痛みが苦手な人へ|リラックスした状態で手術を受けられる「静脈内鎮静法」
痛みのピークや期間がわかっても、手術そのものへの恐怖心や緊張が強い方もいるでしょう。
特に歯科治療が極度に苦手な方にとって、手術の音や雰囲気は大きなストレスです。
そうした不安を和らげるため、局所麻酔に加えて「静脈内鎮静法」という選択肢があります。静脈内鎮静法を用いれば、うとうとと眠っているようなリラックスした状態で、恐怖心をほとんど感じることなく手術を終えることが可能です。
静脈内鎮静法とは?
静脈内鎮静法とは、点滴によって鎮静薬を投与し、精神的な緊張や不安を和らげる麻酔方法です。
全身麻酔のように完全に意識がなくなるわけではなく、うたた寝をしているような、ぼんやりとリラックスした状態になります。
呼びかけには応じられますが、健忘効果(記憶が残りにくい作用)があるため、手術中の記憶はほとんど残りません。
治療に対する恐怖心や不安感が強い方、嘔吐反射(口の中に器具が入ると吐き気をもよおす症状)が強い方に特に有効な方法です。
静脈内鎮静法のメリットと注意点
静脈内鎮静法の最大のメリットは、不安や恐怖を最小限に抑え、快適に手術を受けられる点です。
手術中の不快な記憶が残りにくいのも利点です。
また、血圧や脈拍が安定するため、高血圧や心疾患などの持病がある方でも安全に手術を受けやすくなります。
注意点としては、原則として保険適用外(自由診療)のため追加の費用がかかること、手術後は薬の影響が残るため当日の自動車・自転車の運転や機械の操作はできないことなどが挙げられます。
事前の説明をよく聞き、理解した上で選択することが重要です。
静脈内鎮静法が受けられる歯科医院の選び方
静脈内鎮静法はどの歯科医院でも受けられるわけではありません。
安全に実施するためには、麻酔に関する専門的な知識と経験を持つ歯科医師や、日本歯科麻酔学会の認定医・専門医などの麻酔科医との連携が不可欠です。
また、手術中の全身状態を管理するための生体情報モニターといった設備が整っていることも重要なポイントになります。
静脈内鎮静法を希望する場合は、公式ウェブサイトで対応可能かを確認したり、事前のカウンセリングで安全性や実績について質問したりして、信頼できる歯科医院を選ぶようにしましょう。
痛みを悪化させないために|インプラント手術後に自宅でできる3つのセルフケア
手術後の痛みを最小限に抑え、スムーズな回復を促すためには、術後のセルフケアも非常に重要です。
1. 痛み止めは我慢せず処方通りに正しく服用する
手術後に処方される痛み止めは、痛みを我慢せずに正しく服用することが大切です。
特に、麻酔が切れる前に服用を開始し、その後も痛みが強くなる前に定期的に飲むことで、痛みを効果的にコントロールできます。
「痛くなったら飲もう」と我慢していると、一度強くなった痛みを鎮めるのにより多くの時間と薬が必要になる場合があります。
2. 患部を冷やす際の正しい方法とタイミング
患部を冷やすことは、手術後の痛みや腫れを和らげるのに有効です。
ただし、冷やしすぎは血行を悪化させ、かえって傷の治りを遅らせる可能性があるため注意が必要です。
氷嚢や保冷剤を直接肌に当てるのではなく、タオルで包んだり、濡らしたタオルや冷却シートを使ったりして、頬の上から優しく冷やしましょう。
冷やすタイミングは、炎症のピークである手術当日から翌日が最も効果的で、長くとも48時間程度にとどめるのが一般的です。
3. 喫煙や激しい運動など血行が良くなる行動は避ける
手術後の痛みがある期間は、血行が良くなる行動を避ける必要があります。
血流が過剰に促進されると、痛みが増したり、再出血の原因になったりすることがあるためです。具体的には、飲酒、長時間の入浴やサウナ、激しい運動などがあげられます。
また、喫煙はタバコに含まれるニコチンが血管を収縮させて傷の治りを妨げるだけでなく、感染のリスクも高めるため、少なくとも術後1週間(できれば治療期間中)は控えることが推奨されます。
これは危険信号かも?すぐに歯科医院に相談すべき異常な痛みのサイン
適切なセルフケアを行っていても、通常の経過とは異なる「異常な痛み」が生じることがあります。放置するとインプラントの失敗(脱落)にもつながりかねないため、危険なサインを見逃さないことが重要です。
痛みが1週間以上経っても全く引かない
通常、インプラント手術後の痛みは3日目あたりをピークに、1週間もすれば徐々に和らいでいきます。
1週間以上経過しても痛みが全く引かない、あるいはむしろ強くなっていく場合は、傷口の細菌感染や、インプラント体による神経圧迫などの可能性が考えられます。
処方された痛み止めが効かないほどの激痛
処方される痛み止めは、通常の術後の痛みをコントロールできるように計算されています。
指示通りに服用しているにもかかわらず全く効果がないほどの激痛は、細菌感染による強い炎症、骨を削る際の熱による骨の火傷(オーバーヒート)、神経損傷などのリスクが考えられます。
歯茎から膿が出る、または強い口臭がする
インプラントを埋め込んだ周囲の歯茎が赤く腫れて膿が出たり、強い口臭がしたりする場合、細菌感染を起こしている可能性が非常に高いです。
これは放置するとインプラントを支える骨が溶けてしまう「インプラント周囲炎」の危険なサインです。
インプラントがグラグラと動く感覚がある
手術後、インプラントと顎の骨がしっかりと結合する期間(オッセオインテグレーション)が必要です。この期間中にインプラントがグラグラと動く感覚がある場合は、初期固定の不十分や感染などが原因で、骨との結合がうまくいっていない可能性があります。
上記のような症状がある場合は我慢せず、すぐに手術を受けた歯科医院に連絡してください。
インプラントの痛みに関するよくある質問
Q. インプラント手術中の「骨を削る音」や振動は怖いですか?
A. 手術中は麻酔が効いているため、痛みを感じることはありません。しかし、骨を削る際のドリルによる振動や音(キーンという音など)は頭に響くため、これが恐怖心に繋がる方はいます。
多くの歯科医院ではリラックスできるよう音楽を流すなどの配慮をしています。
どうしても不安な場合は、うとうとした状態で手術を受けられる「静脈内鎮静法」を検討するのもおすすめです。
Q. インプラント手術後は痛みで眠れないほど辛いですか?
A. 通常は処方される痛み止めを服用すれば、日常生活に支障が出ない程度にコントロールできる範囲の痛みです。
眠れないほどの激痛が続くことは稀ですが、もし薬を飲んでも眠れない、夜中に痛みで目が覚めてしまうといった状態が続く場合は、何らかの異常(感染など)が疑われます。我慢せずに速やかに歯科医院へ連絡してください。
Q. 治療から数年後にインプラント周囲が痛むのはなぜですか?
A. 治療後、数年経ってから痛む場合、最も多い原因は「インプラント周囲炎」です。これはインプラントの歯周病のようなもので、日々のセルフケアや定期メンテナンスの不足により、周囲に付着したプラーク(歯垢)や歯石の細菌が原因で起こります。
放置するとインプラントを支える骨が溶け、最悪の場合は脱落につながるため、早急な治療が必要です。
まとめ
インプラント治療における痛みについて解説しました。
手術中の痛みは局所麻酔によってしっかりとコントロールできるため、過度に恐れる必要はありません。
手術後の痛みは術後2~3日をピークに、1週間ほどで徐々に落ち着くのが一般的です。
手術や痛みに強い不安がある方には、リラックスした状態で治療を受けられる「静脈内鎮静法」という選択肢もあります。
痛みの経過や正しい対処法を知ることで、不安は大きく軽減できます。まずは信頼できる歯科医院でカウンセリングを受け、自身の不安や疑問を相談することから始めてみてください。
記事執筆・記事監修
医療法人明貴会 山口歯科医院 理事長 山口 貴史

- ■取得資格
-
- 歯学博士
- 日本口腔インプラント学会 (専門医)
- ドイツ口腔インプラント学会・国際口腔インプラント学会(専門医・指導医)
- 日本抗加齢医学会 (専門医)
- 厚生労働省 歯科医師臨床研修指導歯科医
- 点滴療法研究会 Master of IVC Therapy
