インプラントを断られた理由とは?治療できる可能性があるケースも解説
「インプラント治療を受けたいのに、歯科医院で断られてしまった……」と悩んでいませんか?
インプラントを断られる理由は、顎の骨の量が不足している、全身の健康状態に問題がある、歯周病などのお口のトラブルがある、治療後のメンテナンスが難しいと判断されたなど、さまざまです。
ただし、一度断られたからといって、すべてのケースで治療を諦める必要はありません。事前の適切な処置や、治療方法の見直しによって、インプラント治療を検討できる場合があります。
この記事では、インプラントを断られる主な理由と、治療できる可能性があるケースについて詳しく解説します。
▼この記事のポイント
・断られる理由はさまざま:骨の量、お口の病気、全身の状態などが影響します。
・骨が少なくても対応可能:「骨造成(こつぞうせい)」などの処置で治療できることがあります。
・お口のトラブルは先にお治療:歯周病などは、先に完治させることでインプラントを検討できます。
・持病があっても連携で可能に:主治医と連携し、全身状態が安定していれば治療できるケースもあります。
・セカンドオピニオンが有効:「無理」と言われた場合でも、別の医院に相談する価値は十分にあります。
インプラント治療ができるかどうかは、年齢だけで決まるものではありません。
お口の状態や全身の健康状態、顎の骨の状態などを詳しく確認したうえで判断することが大切です。
「なぜ断られたのか知りたい」「本当にインプラントはできないの?」と悩んでいる方は、諦める前に、まずは信頼できる歯科医師に相談してみましょう。
インプラントを断られても諦めないで!歯科医院によって診断が異なる理由
インプラント治療が可能かどうかの判断は、実は歯科医院によって異なる場合があります。その理由は、担当する歯科医師の経験や技術力、治療方針、そして医院が保有する設備に差があるためです。
例えば、難易度の高い外科処置の経験が豊富な医師や、骨の状態を三次元で精密に分析できる「歯科用CT」などの設備が整った医院であれば、他の医院で「不可能」と診断された症例でも対応できることがあります。
そのため、最初の診断だけで諦めずに、別の医院の意見を聞く「セカンドオピニオン」を受けることが重要です。
インプラント治療を断られる代表的な5つの理由
インプラント治療を受けられないと診断される背景には、患者さんのお口や全身の状態、さらには歯科医院側の環境など、さまざまな理由が考えられます。代表的な5つの理由について、それぞれ詳しく解説します。
理由1:インプラントを埋め込む顎の骨の量が不足している
インプラントを断られる最も一般的な理由が、顎の骨の量(高さや幅)の不足です。
インプラントは人工の歯根を顎の骨に埋め込んで固定するため、土台となる骨が十分にないと安定しません。
歯が抜けた状態を長期間放置したり、重度の歯周病にかかったりすると、顎の骨は徐々に吸収されて薄くなります。
骨が足りない状態で無理に手術を行うと、インプラントが早期に脱落したり、近くにある重要な神経や血管を損傷したりするリスクが高まるため、治療不可と判断されやすくなります。
理由2:重度の歯周病によって顎の骨が溶けている
現在、重度の歯周病にかかっている場合も、インプラント治療を断られる原因となります。歯周病は、細菌感染によって歯を支える顎の骨が溶かされてしまう病気です。
お口の中に歯周病菌が多い状態でインプラント手術を行うと、手術部位が細菌に感染し、インプラントが骨と結合しなくなります。また、結合したとしても「インプラント周囲炎」というトラブルを引き起こすリスクが非常に高くなります。
そのため、インプラント治療の前には歯周病をしっかりと治療し、お口の中の衛生状態を改善することが不可欠です。
理由3:コントロールが難しい全身疾患を抱えている
全身の健康状態もインプラント治療の可否に大きく影響します。
特に、血糖値のコントロールができていない重度の糖尿病、血液をサラサラにする薬を服用している心疾患や脳血管疾患、骨の代謝に影響を与える骨粗しょう症などの持病がある場合、手術が難しいと判断されることがあります。
これらの疾患は、手術後の傷の治りが遅かったり、細菌への抵抗力が低下して感染しやすかったりするためです。
ただし、内科の主治医と連携し、全身状態が安定していれば治療可能なケースも多いため、まずは医師に相談してみましょう。
理由4:喫煙の習慣があり、改善が見込めない
喫煙は、インプラント治療の成功率を著しく低下させる大きなリスク因子です。
タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、歯茎の血流を悪化させます。
これにより、手術後の傷の治りが遅れるだけでなく、インプラントと顎の骨がしっかりと結合するのを妨げてしまいます。
また、喫煙者は非喫煙者に比べて免疫力が低下しやすく、歯周病やインプラント周囲炎にかかるリスクも高まります。
そのため、多くの歯科医院では、インプラント治療の条件として「治療期間中の禁煙」を強く推奨しています。
理由5:治療を担当する歯科医院の設備や技術的な制約
患者さん自身の問題ではなく、歯科医院側の設備や技術的な制約によって治療を断られるケースも少なくありません。
例えば、顎の骨の構造を立体的に把握できる「歯科用CT」がなければ、難症例の正確な診断や安全な手術計画の立案は困難です。
また、骨の量が不足している場合に必要な「骨造成(こつぞうせい)」といった高度な外科処置に対応できる技術や経験を持つ医師がいなければ、医院側は断るしかありません。
つまり、骨の量が原因で断られた場合でも、専門的な医院を選べば対応できる可能性が十分にあります。
骨が足りないと診断された方へ|インプラントを可能にする骨造成治療
「顎の骨が足りない」という理由でインプラントを断られたとしても、治療を可能にする方法があります。それが「骨造成治療」です。
骨造成治療とは、インプラントを埋め込むために必要な骨の高さや幅が不足している場合に、特殊な材料を用いて骨を再生・増量させる外科処置の総称です。この治療により、これまでインプラントが難しいとされていた症例でも、安全に治療を行えるようになります。
代表的な3つの骨造成治療を紹介します。
【サイナスリフト】上顎の奥歯部分の骨の高さを大幅に増やす
主に上の顎の奥歯部分の骨の高さが著しく不足している場合に行われる治療法です。
上顎の奥には「上顎洞(サイナス)」という空洞があります。この上顎洞の底部分にある膜を慎重に持ち上げ、できた隙間に骨補填材やご自身の骨を移植して、インプラントを埋め込む十分な骨の高さを確保します。広範囲にわたり多くの骨量を増やせるのが特徴です。
【ソケットリフト】上顎の奥歯部分の骨をピンポイントで補う
サイナスリフトと同様に、上顎の奥歯部分の骨の高さを補う治療法です。大きな違いはアプローチ方法にあります。
ソケットリフトでは、インプラントを埋め込むために形成した穴から、専用器具を使って上顎洞の底を押し上げ、骨補填材を入れます。サイナスリフトに比べて傷口が小さく、体への負担を軽減できますが、増やせる骨の量には限りがあるため、骨の不足量が比較的少ない症例に適用されます。
【GBR(骨誘導再生法)】骨の幅や高さが不足している部分を再生させる
骨の高さだけでなく、幅が不足している場合にも適用できる汎用性の高い治療法です。
骨を増やしたい部分に骨補填材を置き、その上を「メンブレン」という特殊な人工膜で覆います。この膜が歯茎などの軟組織の侵入を防ぐ壁となり、内側で骨が再生されるスペースを確保します。
上顎・下顎どちらにも適用でき、多くの症例で用いられています。
諦めるのはまだ早い!セカンドオピニオンで相談すべき歯科医院の選び方
一度インプラントを断られたとしても、別の歯科医院に相談するセカンドオピニオンによって治療への道が開ける可能性があります。
しかし、どの医院に相談しても同じ結果になるとは限りません。治療を成功させるためには、難症例に対応できる適切な歯科医院を選ぶことが極めて重要です。医院を選ぶための具体的なポイントを4つ解説します。
難症例のインプラント治療実績が豊富か
骨が極端に少ないケースや、複数の歯を失ったケースなど、複雑な状況での治療経験が豊富な医院は、トラブルに対応できる知識と技術を持っています。
クリニックのウェブサイトに掲載されている症例写真や実績数を確認したり、カウンセリングの際、自分と似たケースの治療経験があるか直接質問してみたりすると良いでしょう。
骨造成などの外科処置に対応できる医師が在籍しているか
骨の量が原因で断られた場合、骨造成などの専門的な外科処置に対応できるかどうかが鍵となります。
インプラント専門医や口腔外科を専門とする医師が在籍している医院は、高度な外科処置に関する知識と経験が豊富です。医師の経歴や所属学会をウェブサイトで確認することも、医院選びの参考になります。
歯科用CTなど精密な検査ができる設備が整っているか
安全で確実なインプラント治療を行うためには、精密な検査が不可欠です。
特に、顎の骨の厚みや高さ、神経や血管の位置などを三次元的に把握できる「歯科用CT」は、難症例の診断において必須の設備と言えます。
従来のレントゲン写真だけでは得られない立体的な情報を得ることで、手術のリスクを大幅に軽減できます。
治療のリスクや費用について丁寧に説明してくれるか
技術や設備だけでなく、患者さんとのコミュニケーションを大切にする姿勢も重要です。
メリットだけでなく、起こりうるリスクやデメリット、インプラント以外の治療法との比較、治療期間、そして追加処置を含めた総額費用などを、時間をかけて丁寧に説明してくれる医師は信頼できます。
こちらの疑問や不安に真摯に耳を傾けてくれるかを見極めましょう。
「インプラントは本当に自分にできる?」と悩んでいる方へ。
治療を検討する際に知っておきたい費用や流れ、医院選びの詳しいポイントも確認しておきましょう。
▶京都でインプラントをご検討の方へ|費用・治療の流れ・医院選びまで徹底解説
インプラント治療がどうしても難しい場合の他の選択肢
セカンドオピニオンを求めた結果、やはり健康状態や顎の骨の状態からインプラント治療が極めて困難であると判断される場合もあります。
しかし、歯を失った際の選択肢はインプラントだけではありません。近年では入れ歯やブリッジの技術も大きく進歩しており、快適で見た目にも優れた治療法が存在します。
周囲の歯への負担が少ない精密な入れ歯
「入れ歯」と聞くと、金属のバネが目立ったり、ずれたりするイメージがあるかもしれませんが、最近では審美性や機能性に優れた入れ歯が登場しています。
例えば、金属のバネを使用しない「ノンクラスプデンチャー」は見た目が自然で周囲に気づかれにくいのが特徴です。また、残っている歯根やインプラントに磁石を埋め込み、強力な磁力で固定する「マグネットデンチャー」は安定性が高く、しっかりと噛むことができます。
残っている健康な歯を土台にするブリッジ
失った歯の両隣にある健康な歯を削って土台とし、そこに橋を架けるように連結した人工歯を装着する治療法です。
固定式であるため入れ歯のような取り外しの手間がなく、自分の歯に近い感覚で噛むことができます。
ただし、ブリッジを支えるために健康な歯を削る必要がある点や、土台となる歯に負担がかかりやすい点がデメリットです。
インプラントを断られた場合のよくある質問
Q1. 「骨がない」とインプラントを断られましたが、どれくらい足りないのか詳しく知る方法はありますか?
歯科用CTによる精密検査で、骨の量や質をミリ単位で正確に把握できます。
CT画像からは、二次元のレントゲンでは分からない骨の高さ、幅、密度、さらには神経や血管の位置まで立体的に確認可能です。
この検査により、インプラント治療が可能か、また骨造成が必要な場合はどの程度骨を増やすべきかを具体的に診断できます。
Q2. 他の病院でインプラントを断られた後、セカンドオピニオンで治療ができたケースは多いですか?
他の医院で断られた後に、セカンドオピニオンで治療が可能になったケースは決して少なくありません。
歯科医師の技術力や経験、医院が導入している設備によって診断基準が異なるためです。特に難症例の実績が豊富な医院に相談することで、治療の可能性が大きく広がります。
Q3. 骨を増やす治療が必要な場合、インプラントの費用はどのくらい変わりますか?
骨造成治療を行う場合、通常のインプラント費用に加えて別途料金が発生します。追加費用は、骨を増やす範囲や量、用いる術式(サイナスリフトやGBRなど)によって大きく異なりますが、一般的には10万円から30万円程度が目安です。治療を開始する前に、必ず総額費用の見積もりを確認することが重要です。
まとめ
歯科医院でインプラント治療を断られたとしても、すぐに諦める必要はありません。断られる理由には、顎の骨の量、全身疾患、あるいは歯科医院側の設備や技術的な制約などさまざまな要因が考えられます。
特に骨の量が不足している場合でも、骨造成治療などの専門的な処置によってインプラントが可能になるケースは多くあります。
大切なのは、最初の診断がすべてだと考えず、難症例の実績が豊富で、精密な検査設備が整った信頼できる医院でセカンドオピニオンを受けることです。この記事で得た知識をもとに、ご自身の状況に合った最適な治療法を選択するための一歩を踏み出してください。
記事執筆・記事監修
医療法人明貴会 山口歯科医院 理事長 山口 貴史

- ■取得資格
-
- 歯学博士
- 日本口腔インプラント学会 (専門医)
- ドイツ口腔インプラント学会・国際口腔インプラント学会(専門医・指導医)
- 日本抗加齢医学会 (専門医)
- 厚生労働省 歯科医師臨床研修指導歯科医
- 点滴療法研究会 Master of IVC Therapy
